2013年5月14日火曜日

「酢水ロック」を再考しましょう。まず、チューブ閉塞の機序。

「横浜市立大学で、栄養チューブの閉塞解除を目的として25%酢酸を注入した患者が死亡した」と、2013年5月1日に報道がありました。

S総合病院では、病棟によって、経鼻栄養チューブの閉塞を予防する目的で、10倍希釈した食酢(酢酸濃度として約0.5%)をチューブ内に充填している場合があります。

報道の件とは、目的・方法が異なりますので、問題はありませんが、この機会に、チューブ閉塞の機序、予防について、現在得られている知見を共有しましょう!!


チューブ閉塞の機序

チューブの閉塞は、薬剤投与による閉塞以外に、栄養剤に含まれている蛋白質のカード(curd)化によっておこります。
カード化は、酸によって蛋白質の構造が変化して、ヨーグルトのように凝集してしまう現象です。牛乳に酢を混ぜて作る、カッテージチーズのイメージです。


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胃腸内にあるチューブ先端は、胃酸や細菌が産生する有機酸類によって酸性となり、栄養剤中の蛋白質が変性凝集します。
いったん先端でカード化が起きると、更に上流側にも凝集が進み、チューブが閉塞してしまいます。



半消化態はカード化注意

栄養剤は窒素源の成分に基づいて成分栄養剤、消化態栄養剤、半消化態栄養剤、濃厚流動食に分類されます。窒素源はそれぞれ、成分栄養剤はアミノ酸、消化態栄養剤はペプチドですが、それ以外は蛋白質です。

経腸栄養で汎用される、半消化態栄養剤は、大豆タンパクや乳タンパクを窒素源としますので、カード化が起きます。一方、成分栄養剤、消化態栄養剤はカード化をきたさないため、チューブは閉塞しにくいとされています。

半消化態栄養剤は、日常的に最も汎用されますので、カード化対策は必須ですネ。


窒素源

●アミノ酸→成分栄養[エレンタール(医薬品)]

吸収良。チューブ閉塞なし。
味悪くフレーバー必要。脂肪が少ない。

●ペプチド→消化態[ペプタメン(食品)、ツインライン(医薬品)]

吸収良。チューブ閉塞なし。味悪く経口不可。

●蛋白質→半消化態[メイバランス等(食品)、エンシュア、ラコール(医薬品)]

消化が必要。カード化有。経口摂取適す。

チューブが閉塞しにくいからといって万能ではないですねぇ。栄養剤は適材適所の選択が必要です。
(文責I)